リノベーション

不動産投資の「コロナ後」に民泊ビジネスはアリか?展望と有望性

訪日外国人客の宿泊需要が急増したことによって、住宅を宿泊施設として利用する民泊が広がりを見せました。しかし、2020年に新型コロナウイルス感染拡大が起きたことでインバウンド景気自体が大きく冷え込むこととなり、民泊ビジネスも大きな転機を迎えています。今回は、そんな民泊ビジネスの概要とメリットやデメリット、さらに今後の展望について解説します。

外国人観光客の増加

1.民泊に対する法的な見方の現状と今後

民泊は法的にグレーな扱いが続いた時期があるため、どのような法的根拠で運営されているのかという点において曖昧さを感じている人もいるでしょう。ここでは民泊の法的根拠と仲介サービスの存在、さらには新型コロナウイルス感染拡大による影響と今後について解説します。

1-1.3つのタイプの民泊事業

民泊を合法的に営業するための事業タイプは以下の3つがあり、これらのいずれにも該当しない民泊は違法になってしまいます。

①旅館業法(簡易宿所営業)
旅館やホテルなどの宿泊施設を営業するために必要な基準などを定めているのが、旅館業法です。昭和23年に制定された、実はとても古い法律です。この法律では宿泊料を受けて人を宿泊させる営業を旅館業と定義しているため、民泊もこれに該当すると解釈されています。

さらに、この旅館業法には簡易宿所営業というカテゴリーがあり民泊はこれに該当します。ベッドハウスやスキー小屋も簡易宿所営業に分類されるため、旅館業法の許可を取得した上での民泊も、これらと同様の扱いになります。

②国家戦略特区法(特区民泊)
国家戦略特区として認められた一部の自治体では、「特区民泊」と呼ばれる特別な制度のもとで合法的な民泊ビジネスが可能です。この特区の指定を受けているのは東京都大田区や大阪府、大阪市などです。特に大阪市での特区民泊は件数が多く、2020年4月30日時点で3,000以上の施設が特区民泊として営業をしています。

平成26年までは7泊以上の宿泊でなければ対象となりませんでしたが、平成28年には3泊以上が対象となったため、より多くの宿泊需要を取り込めるようになりました。

③住宅宿泊事業法(新法民泊)
民泊需要の高まりを受け、国の法律として2018年に制定されたのが住宅宿泊事業法(通称、民泊新法)です。1年のうち民泊として使用できるのは180日までと定められているため、残りの半分は民泊ビジネスに利用できない制約はありますが、国家戦略特区に指定されていない地域でも合法的な民泊ビジネスを展開できる道筋が整いました。

ちなみに、民泊新法が1年のうち使用できる日数を180日としているのは、もともと住居として用意されたスペースだけに周辺には住居として利用されている物件が多いことを想定し、周辺環境への影響を緩和する目的があります。この問題は、投資家が複数の物件を民泊運用することで克服が可能です。

1-2.国内の民泊仲介サービスはどんなものがある?

不動産オーナーが民泊ビジネスを展開する場合、集客するためのツールが必要です。そこでもっぱら利用されているのが、民泊仲介サービスです。世界的な知名度で民泊ビジネスの普及に大きく貢献した「Airbnb」をはじめ、その他にも日本国内で利用できるサービスには以下のようなものがあります。

  • スペースマーケット
  • 一休.com
  • エアトリ民泊
  • HomeAway(英語)

1-3.新型コロナウイルス感染拡大による影響は?

新型コロナウイルスの感染拡大は、外出の自粛要請という旅行業界にとっては致命的な事態を引き起こしました。各国が外国からの入国を停止しているため、訪日外国人によるインバウンド需要も激減、一部ではホテルの破綻など具体的な影響も出ています。

ホテルの破綻が起きるということは、同じく宿泊ビジネスである民泊にも同様のことが起きていることが容易に想像できます。ただし、2020年6月時点では国内旅行者の需要喚起などによって回復の兆しを見せており、アメリカでは宿泊需要の回復は民泊が先行しているという報道もあります。

国境をまたぐ人の移動が本格的に再開するにはまだ時間を要しますが、日本では国内移動が再開していく流れが続いているので、国内需要に目を向けることで民泊ビジネスの有望性が根本的に損なわれることはないと見られています。

2.民泊運用のメリット・デメリット

所有している不動産物件を民泊運用するにあたってのメリットとデメリットについて解説します。

和のテイストを盛り込んだ内装

2-1.民泊運用のメリット

不動産投資として「民泊」を考えた場合、その収益率の高さがメリットとして挙げられるでしょう。部屋を貸す立場から見ると、民泊のほうが通常の賃貸よりも収益率が高く運用できる可能性が高いのです。

通常ならば、毎月の家賃が9万円の物件を、民泊では1泊あたり1万2,000円といった宿泊料で貸すことができます。これなら15日(泊)の稼働で18万円となり、そこから清掃やWebサービスの利用料などを差し引いても、賃貸より利益率が高くなる可能性があります。

立地条件にもよりますが、賃貸物件としての利用価値が低くなってしまっている物件であっても宿泊利用であればニーズを掘り起こせる可能性があるため、遊休資産の活用によって不動産物件を再生することもできます。

2-2.民泊運用のデメリット

デメリットとして意識しておくべき点に、マンション一棟や戸建て物件のオーナーでないと民泊としての運用が現実問題として難しい可能性が高いことが挙げられます。マンションの中で区分所有の物件を貸すことは管理組合の規約により不可とされるケースが多く、この場合は仮に法的な問題をクリアしていても規約違反となるため民泊運用はできません。

ローンを組んで物件を購入した場合も、注意が必要です。金融機関は、対象不動産の利用目的を「住居」と判断していますが、民泊の場合は「事業」と見なされて、より金利が高く期間も短いローンにするべきだと判断される可能性があります。その場合はローンが組めなかったり、期待したほどの利回りが上がらなかったりといった理由で収益性が大幅に下がることになるかもしれません。

もう一点、地方の農村部などで特別な宿泊体験を売りに空き家や古民家の民泊運用を考える場合、その地域が市街化調整区域に指定されていると民泊ビジネスそのものができない可能性があるので、注意が必要です。

その理由は、市街化調整区域は特別な許可がなければ開発行為ができないからです。空き家や古民家など既存の建物をそのまま利用するのであれば可能かもしれませんが、長期にわたって空き家のまま放置されているとリノベーションだけでなく増改築を含む工事が必要になることもあるでしょう。その場合は市街化調整区域の規制による影響を受ける可能性があるのです。

3.リノベーション物件が民泊で有利な理由

リノベーション物件は民泊で有利になると言われています。その理由を見ていきましょう。

3-1.利用者のニーズに応えやすい

民泊利用者は基本的に、通常のホテルでは得られないような宿泊体験を求めています。そうした利用者に対してリノベーションを施したデザイン性の高いユニークな物件を提供することは、稼働率のアップにつながります。新型コロナウイルス感染拡大によって外国人の需要は低迷が続くと見られていますが、こうした需要が回復した際には和室や和のテイストを盛り込んだ内装の物件など、再び外国人から人気を集める時がくるでしょう。

宿泊客で多いパターンは2、3人のグループと言われており、それを踏まえると1LDK程度の物件が適しています。ベッドルームにベッドを2つ置き、必要に応じてリビングに簡易ベッドを用意すれば、3名の宿泊も可能です。

3-2.空き家を活用できる

民泊は遊休資産の有効活用という目的で登場した、シェアリングエコノミーの一種です。現在では民泊ビジネスのために物件を用意する投資家も多くなりましたが、当初は空き家や不人気賃貸物件など、住居向けでは十分な集客が見込めないような不動産を宿泊施設として有効活用することができるビジネスとして普及した経緯があります。

さらに、民泊利用者の中には「民泊だから泊まりたい」という目的をもって宿泊先を選ぶ人たちがいます。先ほど和のテイストを好む外国人について触れましたが、日本国内であっても「田舎暮らしのような体験」「漁師町に泊まりたい」といったように都会で体験できないような宿泊体験を求める価値観を持つ人たちが多くなっています。こうした人たちをターゲットに、地方の空き家物件をリノベーションしてそれを民泊施設として活用することは、大いにビジネスチャンスがあるといえるでしょう。

3-3.好きなタイミングでリノベーションできる

不動産物件のリノベーションには工事が必要になりますが、工事を依頼する時期によっては費用が高くなることがあり、また投資家自身が十分なリノベーション費用をそもそも用意できていない場合もあります。しかし、民泊であれば急ぐことなく好きなタイミングで工事を行うことができるため、より有利な条件でリノベーションをすることができます。

特に2020年以降は新型コロナウイルスの影響がまだまだ続くことが考えられるため、民泊ビジネスの主要なマーケットである訪日外国人客の本格的な来訪はすぐには期待できないでしょう。それまでの期間をリノベーションなど民泊に適した物件づくりの準備期間ととらえ、じっくりと準備をしていくのも戦略として有効です。

4.まとめ

民泊ビジネスの法的な位置づけやメリット、デメリット、それに加えて新型コロナウイルスの感染拡大という未曽有の事態による民泊ビジネスへの影響などについて解説してきました。

訪日外国人の需要がほとんどなくなってしまった状況下において民泊ビジネスには悲観的な見方もありますが、その一方で国内需要を掘り起こす動きも見られ、回復を示すデータや報道もあります。空き家などの遊休資産は放置していてもメリットがないため、リノベーションにより民泊として物件を再生することは有望な選択肢のひとつといえるのです。

3年以上勤めた会社員へ。
あわせて読みたいおすすめコラム