リノベーション

リノベーションで入居率・稼働率アップする理由とメリット&デメリット

賃貸マンションオーナーにとって、空室は最大のリスクです。空室対策としてできることはいくつかありますが、その一つに「入居者が住みたくなる部屋をつくる」ということがあります。そのための手法として注目されているのが、リノベーションです。

なぜリノベーションをすると入居率と稼働率がアップするのでしょうか。その背景とリノベーションを行うメリット、デメリットについて解説します。

空室対策は最重要ポイント

1.最近の賃貸マンション動向

賃貸マンション市場について、最新のデータを交えながら動向を見ていってみましょう。

1-1.賃貸マンションの空室率

総務省が5年おきに実施している住宅・土地統計調査の平成31年版によれば、日本全国の戸建から共同住宅までを含む空き家率は、1963年から一貫して上昇を続けています。

平成30年時点での「居住世帯のない住宅」は876万戸にのぼり、総住宅数に占める比率は14%です。すでに10軒のうち1軒以上の住宅が空き家になっているわけですが、さらに深刻だと言えるのはその比率が上がり続けていることです。ご存じの通り日本ではすでに人口減少が始まっています。人口が減っているのに住宅数は増えているのですから、今後も空室率は上昇を続けることになるでしょう。

その一方で、不動産鑑定手法による不動産評価システムを提供している民間企業が発表した調査結果によると、首都圏の神奈川や千葉、埼玉などでは空室率が上がってきているのに対して、東京の空室率は下降しており、都心回帰の傾向が見て取れます。

何十年とマンション経営をしていると、まったく空室が出ないということはあまりないでしょう。しかし、なるべく空室が出ないようにして、また空室が出てしまっても次の入居者が入るまでの期間を短くすることが、投資効率を上げるための重要なポイントになります。

空室リスク対策として購入時点に考えるべきことは、空室率の推移を踏まえて、東京都内の物件、なかでも利便性の高い立地の物件を選ぶこと、そして入居者が「住みたい」と思う人気のある間取りや内装・設備の物件を選ぶということです。

1-2.空室対策としてのリノベーション

立地条件も賃貸住宅の集客力に深く関わる部分ですが、マンションの場合は機能性や利便性、そしてデザイン性などといった物件そのものの魅力も大きな意味を持ちます。

そこで物件の付加価値を高め、差別化を図るための有効な対策としてリノベーションが注目されています。リフォームは古くなった部分を修繕・更新する意味合いが強いですが、リノベーションだと室内の雰囲気がコンセプトも含めて変わるため、「こんな部屋に住みたかった」という潜在的なニーズを掘り起こすことができます。

2.リノベーションが人気な理由

リノベーションによって再生された物件のことを「リノベーション物件」といいます。このように名前がついているということは、それだけ人気があるからです。なぜリノベーション物件が人気を集めているのか、その理由を解説します。

無垢材を多く使ったリノベーション

2-1.新築にこだわらなくなってきた

入居者の多くが気にするのが、物件の築年数です。新しくてきれいなマンションに住みたいと思う人は多いでしょう。ただし、必ずしも誰もが「新築」にこだわっているわけではありません。家賃を安く抑えたい人もいるでしょうし、築年数よりも立地や通勤・通学の利便性を重要視する人もいるでしょう。人それぞれで優先順位は異なります。

賃貸の世界でも「リノベーション物件」という選択肢が広く知られるにつれて、「マンションの建物自体は古くても、部屋の内装に満足できればいい」と考える人が増えてきています。休みの日はほとんど家で過ごすというような「インドア派」には、部屋の「中」が重要になるのでしょう。マンションが古くても、外観はじっくり見ることはないので専有部分がきれいであれば十分という考えの人も少なくありません。

また、すべての人が新しい部屋を求めているわけではなく、持っている家具やインテリア雑貨などとのデザイン的な相性が重視されるケースもあります。例えば、アンティークが好きな人は、それに合わせやすい内装・デザインの部屋を好んだりします。価値観の多様化は、賃貸住宅にも大きな変化をもたらしているのです。

2-2.ライフスタイルの多様化で、好まれる部屋も変化

人々の、特に大都市に暮らす人のライフスタイルは、とても多様化しています。従来、「新築」の人気は圧倒的でしたが、現在はそれぞれの暮らし方や趣味・嗜好、住居にかけられる予算によって好まれる部屋のタイプもさまざまです。

どこにでもあるビニールクロスにクッションフロアのような内装ではなく、無垢材を多く使った壁やフローリングのナチュラルな風合いの部屋だったり、古材を据え付け家具に使ったヴィンテージ感のある部屋だったり、ありきたりではない自分らしく暮らせるオリジナリティの高い部屋が好まれています。また間取りに関しても、間仕切りを少なくして家具などの配置を自分なりにアレンジしやすい部屋が人気です。

リノベーションで人気の内装・デザインを取り入れた部屋は見栄えも良く、広告に載せた際にも目立ちます。不動産会社も「決め物件」として積極的に紹介してくれるかもしれません。こうした差別化による恩恵は、空室リスクを小さくするうえでも大切だといえるでしょう。

2-3.自分の好みに合った間取りを実現できる

リノベーションでは、物件内の間取りを変更することもできます。新築として販売されているマンションによくある「田の字マンション」をご存じでしょうか。間取り図を見た時に漢字の「田」のように配置されている標準的な間取りのことです。中古でそのまま売りに出されているマンションも大半がこの田の字の間取りになっているため、これだと室内空間の差別化はできず、立地条件や家賃の価格競争になってしまうことでしょう。

そこでリノベーションで、大胆な間取りの変更をすることが有効になります。3LDKの間取りだった田の字マンションをリノベーションして1LDKに変更、リビングを広くすることで開放感のある印象を演出することができます。4人家族には不向きかもしれませんが、夫婦2人でゆったりとした間取りで暮らしたいと考える人には「刺さる」物件になる可能性大です。

2-4.新築だと好立地の物件を探しにくくなっている

不動産は立地が命ですが、すでに好立地の土地には既存のマンションが建っていることが多く、新築物件で好立地のものを探すことは難しくなってきています。

立地条件が良い一方で築古であることから不人気になってしまっているマンションがあるのであれば、「築古である」という印象さえ払拭すれば人気物件に再生することができるでしょう。

3.リノベーションのメリット・デメリット

リノベーションによって物件を再生するメリットとデメリットを整理しました。考えられるメリットは5つ、デメリットは2つです。

3-1.リノベーションのメリット5つ

リノベーションによって得られるメリットは、以下の5つです。

①物件を安く仕入れて付加価値を高め入居率アップ

リノベーションの対象になるのは中古物件なので、新築と比べると安く仕入れることができます。それをリノベーションによって再生することで付加価値を高め、差別化を図ることで入居率のアップが期待できるでしょう。築古物件は築年数のせいで空室率が高くなっている場合が多くみられますが、リノベーションによってその最大の理由を解消することができます。

②家賃引き下げを回避できる

築年数が古くなるにつれて賃貸マンションは集客力が低下するため、家賃を引き下げるなど条件を変更する必要に迫られる時がきます。しかし家賃の安易な引き下げは収益低下に直結するため、できるだけ避けたいところです。そこでリノベーションによって価値を再生すれば、家賃引き下げを回避する有効な対策となります。

③物件の資産価値を高められる

不動産投資には出口戦略として、物件を売却する時のことも含めた戦略が必要です。物件を売却した時に差損が生じ、それが賃料収入の合計を上回ってしまうとトータルで赤字になるため、全体として失敗したことになります。そこで物件の資産価値をいかに維持するかが課題になるわけですが、リノベーションによって付加価値を高めることにより、売却時の資産価値も高めることができます。

④築古物件は好立地のものが多い

先ほども述べたように、築古の物件の中には好立地のものが多数あります。まだそれほど建物が建て込んでいなかった時期だと立地条件の良い土地が空いていた可能性が十分考えられるため、そういった物件は築年数こそ古くなっているものの好立地であるというメリットは維持されています。リノベーションは建て替えではないので築古である事実は解消されませんが、デザインや雰囲気、機能性などを一新することは可能なので、近代的な物件に再生することで好立地のメリットをいかすことができます。

⑤見た目だけでなく機能面、安全面でも物件を再生できる

リノベーションのメリットは中古物件の再生ですが、これはデザイン性など見た目だけの問題ではなく、設備の更新や修繕、補強といったように機能面や安全面の再生も含まれます。「便利、快適である」「安全に住める」というのもリノベーション物件の魅力なので、これも集客力の向上につながります。

3-2.リノベーションのデメリット2つ

メリットの一方で、リノベーションのデメリットについても押さえておきましょう。考えられるデメリットは、2つです。

①リノベーションの費用が別途必要になる

リノベーションの工事には費用を伴うので、この費用分が別途賃貸オーナーにとっての負担になります。物件の広さやリノベーション工事の内容にもよりますが、500万円から1,000万円程度の費用は必要になるので、コストパフォーマンスをしっかりと精査することが重要です。尚、リノベーション費用をローンに組み入れ、好条件での借り換えが可能な場合もありますので、諸条件を専門家に確認すると良いでしょう。

②工事期間中は稼働できない

リノベーション工事に伴う負担は、金銭だけではありません。工事期間中は室内が工事現場になるので、当然ながら入居者に貸すことはできません。この期間は賃貸住宅として機能しないため、これもコストとして考慮しておく必要があります。

4.まとめ

リノベーションによって物件の価値を再生して入居率をアップさせることはできるのかというテーマについて解説してきました。結論としては、リノベーションによって付加価値を高めればその可能性は大いにあり、リノベーション物件を好んで選ぶ人たちの目にも止まりやすくなるでしょう。

リノベーションは空室率の慢性的な高さでお悩みの賃貸オーナーにとって、ひとつの選択肢になり得るのではないでしょうか。

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