不動産投資

投資物件を購入する際に組む不動産投資ローンと住宅ローンの違い

マンションなど不動産を購入する際には、ほとんどの場合、銀行など金融機関でローンを組むことになります。ここでいうローンとは住宅ローンのことではなく収益不動産を購入するための不動産投資ローンのことです。なぜなら、住宅ローンを不動産投資に利用することはできないからです。

同じ不動産購入用のローンでありながら、住宅ローンと不動産投資ローンにはどんな違いがあるのでしょうか。資金の用途だけでなく金利や融資額などでも比較してみたいと思います。また、不動産投資ローンを利用することにはどんなメリットやデメリットがあるのかといった点も含めて、不動産投資ローンの基本的な知識について解説します。

1.不動産投資ローンとは

不動産投資ローンとは、文字通りアパート・マンション経営など不動産投資の資金調達に用いられる専用のローン商品のことです。金融機関によっては、マンション投資ローンやアパートローンといった名称になっていることもあります。不動産投資ローンでは購入する不動産を担保に、金融機関から購入資金の融資を受けることができます。借りた側は、購入物件で不動産経営を行い、月々の賃料収入からローンを返済します。

アパートやマンションの経営にローンを利用するだけでなく、テナントビルや商業施設といったように住居向け物件以外に利用されるローン商品も総じて、不動産投資ローンに含まれます。

2.不動産投資ローンと住宅ローンの違い

不動産投資ローンと混同されやすいのが、住宅ローンです。どちらも不動産購入資金の調達に用いられるものですが、どこに違いがあるのでしょうか。6つのポイントで比較してみましょう。

2-1.そもそも資金用途が異なる

住宅ローンは、自分が住むことを目的とした住宅を購入する際に利用するローンです。国としても住宅の取得を奨励しており、「フラット35」をはじめ金融機関にとって主力商品のひとつでもあります。そのため、住宅ローン控除など税金面での優遇措置があり、不動産投資ローンよりも住宅ローンの金利は低く、借り入れがしやすくなっています。

不動産投資ローンがビジネスのための融資である一方で、住宅ローンは自分が住むという消費のためのローンであるというように、不動産投資ローンと住宅ローンはその目的が根本的に異なります。

2-2.審査の基準に関する概要

一般的に不動産投資ローンは、住宅ローンに比べて審査が厳しいといわれています。

住宅ローンは、基本的には不動産を購入した人が自身の収入から返済します。このため、将来にわたって安定的に給与所得を得られるかどうかなど、借り手本人の返済能力が審査されます。購入する不動産については、資産価値が厳しく問われることはありません。

これに対して不動産投資ローンは、購入物件の収益性が審査されます。物件に投資対象としての価値があるかどうか、また、ローンを完済するまで家賃収入と経費支出は見合うのかどうかが評価されます。そのうえで住宅ローンと同様に、借り手本人の属性(勤務先や年収など)も審査されます。そう考えると住宅ローンよりも審査が厳しいといわざるを得ません。

ただし、不動産投資ローンは事業性のローンなので、年齢については住宅ローンが70歳未満までであるのに対し、不動産投資ローンは条件によっては70歳を超えていても借り入れが可能になります。

2-3.金利の違い

不動産系のローンは借入金額が少なくとも数千万円規模になるため、金利の差は重要な意味を持ちます。この重要な金利についても、不動産投資ローンと住宅ローンでは水準が異なります。

住宅ローンの金利は、一般的に不動産投資ローンと比べて低く設定されています。それは、借りる人が自分(とその家族)で住むことを前提にしているため、返済に対する意識が高いと考えられているからです。例えば住宅ローンの主力商品である「フラット35」だと、2020年4月時点で「15年~20年もの」が1.23%~1.96%、「21年~35年もの」で1.3%~2.03%となっています。

一方の不動産投資ローンは、物件の収益性と本人の返済能力が総合的に判断されて、金利が決定されます。住宅ローンのような優遇税制もないため、不動産投資ローンが住宅ローンよりも高く設定されることになります。例えば不動産投資ローン大手のオリックス銀行で3,000万円の新築区分ワンルームマンションを20年返済で購入するシミュレーションをしてみると、金利は2.675%~3.675%となりました。(2020年4月時点)

住宅ローンと不動産投資ローンの金利を単純に比較しても、住宅ローンのほうが低く設定されていることが分かります。

2-4.融資額上限の違い

住宅ローンが自己居住用の不動産購入に利用することが前提であるのに対し、不動産投資ローンは収益不動産の購入に利用します。そのため融資額の上限にも違いがあります。

「フラット35」の融資額上限は、8,000万円です。住宅ローンを借り入れて自己居住用の不動産を購入するのであれば、ほとんどの人がこの上限金額で充分でしょう。それに対して、先ほどご紹介したオリックス銀行の不動産投資ローンの融資上限額は2億円です。2倍以上の融資枠があるのは、マンション一棟やアパート一棟といった規模の収益物件を購入することもあるからです。

2-5.返済期間の違い

返済期間については、住宅ローンと不動産投資ローンのいずれも35年が上限となるのが一般的です。借り入れをする年齢や金額など条件によってはそれよりも短くなる場合もありますが、基本的にはどちらも最長35年となっています。

2-6.返済資源の違い

返済資源とは、「どのお金でローンの返済をするか」という意味です。住宅ローンの場合は購入した不動産から収益が発生することはないので、返済資源は給料や事業収益など借り手の収入です。それに対して不動産投資ローンの場合は、基本的に収益不動産から得られる賃料収入が返済資源となります。

もっとも、不動産投資の方針や収支の状況によっては賃料収入だけでなく、借り手(つまり不動産投資家)自身の本業収入を返済資源に充当することもあります。

3.ローンは組まなくてもいい?

不動産投資を始める際にローンを組むかどうかは、考え方が分かれるところだと思います。そこで、不動産投資でローンを組むべきかどうかを判断するためにメリットとデメリットを整理しました。

3-1.不動産投資ローンのメリット3つ

不動産投資ローンを利用するメリットは、主に3つあります。

①すぐに始められる
不動産投資ローンは借金なので、十分な購入資金があって借金をしたくないのであれば、ローンを組まなくても構いません。しかし、「購入資金を貯めてから」などと考えていると、物件を購入できるようになるまでに相当の時間がかかります。それに対して、ローンを組んだ場合は少ない自己資金でも不動産投資を始められます。資金を貯めてから購入する場合と比べると、早い段階で家賃収入を得ることができるようになります。言い換えれば、ローンを利用して「時間を買う」のです。

②レバレッジ効果
少ない資金で大きな金額を動かすことを、投資の世界では「レバレッジを効かせる」といいます。ローンを組むことで他人資金を組み入れ、少ない自己資金で収益物件を運用する、つまり投資にレバレッジをかけることが可能になります。多くの投資家の間では自己資金だけで物件を購入できる状況にあっても、レバレッジ効果をいかすために融資を利用するのがセオリーとなっています。

また、不動産から得られた収益をさらに投資に回すことで「複利効果」を得ることも可能になるのです。

③ローン商品によっては保険と同等の効果がある
不動産投資ローンには一般的に、団信(団体信用生命保険)という生命保険が付帯しています。この団信とは、借り手に万が一の事態が起きた時に保険金でローンの残債を完済する仕組みのことです。ローン返済中に借り手が亡くなる、もしくは高度障害などになってしまった場合、残債のない収益物件が残ります。入居者がいる限り賃料収入は借り手の状況に関わらず入り続けるため、これが保険金と同等の効果を持ちます。

3-2.不動産投資ローンのデメリット

次に、不動産投資ローンを利用することで考えられる3つのデメリット(リスク)について解説します。

①空室によるローン滞納リスク
賃料収入をローン返済に充てる考え方は、入居者がいて賃料収入が入ることを前提としています。しかし、不動産投資に空室リスクは付き物です。新築マンションなど集客力の高い物件であれば当初はあまり気にならないかもしれませんが、築年数が経ってくると空室リスクも高くなるため、収入が途絶えることによって返済を滞納してしまうリスクがあります。

不動産投資で資金計画に余裕を持たせることはとても重要ですが、それは空室リスクが顕在化した時にローンを滞納してしまうといった資金ショートを防ぐためでもあります。

②金利上昇リスク
不動産投資ローンには、変動金利型と固定金利型があります。前者の変動金利型はその時の金利相場に応じて金利が上下に変動するタイプなので、将来において金利が上昇することがあると返済額も大きくなるため、金利の上昇が不動産経営を圧迫する恐れがあります。

2020年現在は長らく続く低金利の恩恵もあって不動産投資ローンの金利も数%の水準となっていますが、かつてのバブル期には住宅ローン金利が8.5%になったこともあるように、不動産向けの融資金利は常に変動しています。いきなりこうした10%に迫るような金利になることは考えにくいですが、数十年に及ぶ返済期間で金利が全く上昇しないとは言い切れません。

②売却のタイミングによっては残債が残る
空室率の上昇や賃料の低下、さらには他の事情などで収益物件を売却することになったとします。それがローン返済中であった場合、売却額が残債を上回らない限りは残債だけが残ることになります。ネガティブな理由から手放すことを検討するようなケースでは、よほどその物件を欲しいと思う人が現れない限り、売却額が残債額を上回ることは少なく、返済中の物件売却は残債だけを残してしまうリスク要因になります。

4.サラリーマンが不動産投資ローン組む場合は?

サラリーマンが不動産投資に参入するために不動産投資ローンを組む場合、どの程度の借り入れが可能で、毎月の返済額はどうなるのでしょうか。標準的なマンション投資を始める場合を想定して、シミュレーションしてみましょう。

4-1.一般的な借入れ可能額・シミュレーション

40歳のサラリーマンが区分マンション投資を始めるという想定で、築5年で3,000万円の中古物件を自己資金500万円で購入するとします。オリックス銀行の不動産投資ローンを例に、借入可能額と月々の返済額をシミュレーションしてみたところ、結果は以下のようになりました。

借入金額:2,500万円
最長借入期間:20年
借入金利:2.675%~3.675%
月々の返済額:13万4,617円~14万7,248円

自己資金額を多くすることや、借入期間を延ばすことで、月々の返済額は上記シミュレーションよりも少なくすることができます。

5.まとめ

今回は、不動産投資ローンと住宅ローンの違いについて考えてみました。物件の購入を全額ローンで支払う「フルローン」なら、レバレッジ効果が最大限に活かせると思われた方がいるかもしれません。しかし、どんな投資にもリスクはつきものです。

まずは、きちんと計画を立てましょう。そして月々の返済額を抑えつつ、綿密な収支計画を準備し、物件の収益力や自分の本業の収入に見合ったローンを組みましょう。これこそが、不動産投資を成功させるうえで重要なポイントとなります。

3年以上勤めた会社員へ。
あわせて読みたいおすすめコラム