不動産投資

借入金の返済は経費にならないの?その理由と計上できる不動産投資の経費12選

「不動産投資には節税メリットがある」と見聞きしたことがある方は多いと思います。節税メリットがあるということは、さまざま経費を計上して課税対象所得を減らせるのではないかと想像されると思いますが、実際のところはどうなのでしょうか。

借入金の返済では毎月お金が出ていくので経費になりそうだと感じるかもしれませんが、実はそうではありません。その逆に現金が出ていくわけではないのに経費として計上できる費用があるなど、不動産投資と税金、経費の関係において知っておくべき知識があります。

本記事では、不動産投資における借入金と経費の関係、そして不動産投資で計上できる経費12選を紹介します。

借入金の返済は経費にならないの?その理由と計上できる不動産投資の経費12選

1.借入金の返済は経費になる?

結論から述べると、借入金の返済を経費として計上することはできません。その理由と、不動産投資ならではともいえる「現金が出ていかない経費」についても解説します。

1-1.借入金の元本返済は経費とならない

不動産投資では「実際に出ていくお金」と、「利益を計算するためのお金」はイコールではありません。イコールでない理由は、借入金の元本返済と減価償却にあります。

「利益を計算する上で出ていくお金」を、経費と呼びます。経費は利益を少なくしますが、同時に税金も少なくしてくれる効果があります。つまり経費には節税効果があるのです。

ところが、借入金の返済については、利息部分は経費ですが元本返済の部分は経費になりません。借入金の元本返済は、お金は出ていきますが経費ではないため節税効果がないということになります。

ではなぜ、借入金の元本返済が経費にならないかというと、理由は簡単です。お金を借りたときは、その借りた金額は売上にならないため、返す時も経費にはならないというのが理由です。もし、借入金が売上になってしまったら、お金を借りた時に大きな利益が出てしまい、莫大な税金が発生してしまいます。

ところが、お金を借りても税金は発生しません。それは借りたお金は売上ではないからです。同様に、返すお金に関しても、経費にはなりません。お金を借りたときに税金は増えなかったのに、返したら税金が減ってしまってはおかしな話になります。

1-2.減価償却費は経費になる

一方で、不動産投資では実際にお金を支払わないのに経費になるものがあります。それは、減価償却費です。

減価償却費とは、建物の取得原価を毎年の費用として按分する、会計上発生する費用のことです。実際に支出として発生するお金ではありません。

不動産投資の税金(所得税)は、賃料収入から経費を差し引いた利益に対して課税されます。経費には、土地建物の固定資産税や建物の保険料、修繕費、管理委託費用等の実際に支払われる費用の他、実際には支払われない減価償却費も含まれます。

もし、借入金の元本返済がない状態であれば、「利益-(税金+減価償却費)」がキャッシュフローとなります。「+減価償却費」となるのは、利益を計算する際、実際に支出されない減価償却費をマイナスしていたためです。

これに借入金の元本返済額が加わると、「利益-税金+減価償却費-借入金元本返済額」がキャッシュフローということになります。

現金が出ていかないのに経費として計上できることは節税面で大きなメリットになるので、減価償却費は不動産投資のメリットのひとつとして知られています。

1-2-1.キャッシュフローを良くするには

キャッシュフローが「利益-(税金+減価償却費)-借入金元本返済額」だとすると、借入金の元本返済が大きい場合、キャッシュフローがマイナスになることもあり得ます。つまり、利益がプラスでもキャッシュフローはマイナスなるということもあり得るのです。

不動産投資で重要なのは、キャッシュフローです。キャッシュフローがマイナスとなってしまえば、やる意味がありません。キャッシュフローを改善するには、自己資金を多くして借入金を減らすか、返済期間を長くして毎月の返済額を少なくするといった方法があります。

仮に100%自己資金で投資をした場合のキャッシュフローは「利益-(税金+減価償却費)」になります。ローン返済を差し引く必要がないため、これが不動産投資で得られるキャッシュフローの最大値です。キャッシュフローを上限に近づけるには、なるべく借入金を少なくし、自己資金を多くすることが重要になります。

2.借入金の処理はどうやってするの?

不動産投資の物件購入に際して借入金がある場合は、一時的に多額のお金が入り、以後は少しずつ出ていく形になります。これを会計上はどう処理すればよいのでしょうか。ここではその考え方を簡単に解説します。

借入金の処理はどうやってするの?

2-1.借入れた時の処理方法

不動産投資のための借入金は事業に供する物件の購入費用なので、事業資金です。金融機関からの融資金が振り込まれた時にはお金が入った形にはなりますが、それは売上や所得ではありません。

会計上は事業資金借り入れとして処理しますが、融資を受ける際の諸費用については事業のために要した必要経費なので、これは経費として処理できます。

仮に1,000万円の融資を受けた際に金融機関の手数料が4万円、印紙代が1万円だとすると、必要経費を差し引いた995万円が振り込まれます。この995万円は「事業資金借り入れ」として、金融機関の手数料は「支払手数料」として、印紙代は「租税公課」として処理します。このうち支払手数料と租税公課はいずれも経費として計上が可能です。

2-2.返済した時の処理方法

次に、借入金を返済する際の処理についても解説します。返済金は元本返済と利息で構成されており、元本と利息は別に処理する必要があります。

元本は事業資金として借り入れたお金を返済しているだけなので、経費ではありません。もう一方の利息については事業に供する物件を購入するために支払っているコストなので、経費として計上が可能です。

3.借入金の返済(利息)以外に経費になるもの12選

借入金のうち経費として計上できるのは利息分のみですが、不動産投資にはこれ以外にも数多くの計上可能な経費があります。ここでは経費として認められる12の費用を個別に解説します。

3-1.保険料

所有している物件に火災保険や地震保険を掛けている場合、その保険料は経費にすることができます。これらの保険はポピュラーなものですが、近年では入居者の孤独死などへのリスクヘッジとして孤独死保険に加入する物件オーナーもいます。こうした保険も不動産投資のために必要なものと認められるため、経費として計上できます。

3-2.管理会社への管理委託料

所有物件の管理を委託する場合は管理委託料が発生します。この委託料も不動産投資のために必要なコストなので、経費として計上できます。

管理会社側もこうした事情を心得ているので、会社によっては確定申告の時期に委託料の資料をまとめてくれることがあります。こうしたサービスは兼業大家など忙しい人にはとてもメリットがあるので、管理会社選びにおいてはこうしたサービスの有無も判断材料のひとつにしてもよいでしょう。

3-3.管理費

上記の管理委託料に対して所有している不動産の共用部分や設備などを維持するために発生する費用のことを管理費といいます。

一棟マンションのように建物を丸ごと所有している場合はオーナー自らが手配した業者に支払った金額が経費となりますが、建物の管理も管理会社に一任している場合は上記の管理委託料と一緒に管理費を同じ会社に支払っているケースもあります。

3-4.仲介手数料、広告宣伝費など入居付けのための費用

所有物件が空室になったら、客付けといって入居者を募集する必要があります。これを不動産会社などに依頼すると仲介手数料や広告宣伝費が発生しますが、これらの費用も不動産投資に必要なコストなので、経費となります。

仲介業者に支払うお金以外にも、入居者へのアピールを目的として家具や家電を備え付けた物件にすることがあります。この場合も事業に要する費用となるため、経費として計上可能です。

3-5.修繕費

所有物件の設備が故障した場合には、修繕や交換が必要になります。この他にも入居者が退去した後で物件の原状回復工事をすると、その費用が発生することもあるでしょう。これらの費用も不動産投資の直接的なコストなので、すべて経費となります。

ただし、原状回復ではなく物件のアップグレードをするような工事をした場合は資産的支出となり、固定資産の価値が増大した分を複数年で減価償却する会計処理が必要になります。

3-6.固定資産税などの税金

先ほど印紙代などの税金を経費として計上できると述べました。印紙代以外にも、不動産投資に関連する以下の税金は「租税公課」として経費に計上できます。

  • 固定資産税、都市計画税
  • 登録免許税
  • 不動産所得税
  • 自動車税、重要税 など

ただし、税金であっても所得税や住民税、法人税を経費とすることはできません。そもそも経費を会計処理するのはこれらの税額を確定させるためのものだからです。

3-7.司法書士や税理士への報酬

不動産の取得や売買時には登記を司法書士に依頼するケースが大半です。この際には司法書士報酬が発生しますが、これも経費として計上できます。

その他にもいわゆる士業に関連する費用として、確定申告のために税理士に依頼した場合の報酬、法的なトラブルが発生した際に弁護士を雇った場合の報酬なども経費になります。

3-8.通信費

通信費とはスマホ料金やネット回線の料金などのことを指します。このうち不動産投資に関するものであれば経費とすることができます。

不動産投資の帳簿をつけるためのパソコン購入代金、不動産会社や管理会社と連絡するためのスマホ料金などはいずれも経費として認められるため、実質的には通信に要する費用の多くを経費にすることができるといえます。

3-9.旅費・交通費

購入する不動産の現地調査に要する交通費、金融機関に行くための交通費などはいずれも不動産投資に関連する費用なので、これらも経費として計上が可能です。交通費は領収書などを収集しにくいので、ICカードの利用明細やETCの利用明細などを保存しておきましょう。

3-10.自動車関連費用

不動産投資に関連する移動のために車を購入したのであれば、その購入代金から維持費などを経費にすることができます。ただし自家用車を不動産投資用にも使用している場合は「家の用事」と「不動産投資のための利用」を分けて不動産投資に用いた分のみを経費として計上します。

3-11.情報収集・勉強のための費用

不動産投資の勉強をするために書籍を購入したりセミナーに参加したりといった費用がある場合は、これも不動産投資に必要なコストなので、経費となります。

3-12.交際費

それほど高額になることはないと思いますが、不動産投資に関連して不動産会社の担当者と打ち合わせをした喫茶店の飲食代などは経費になります。あくまでも不動産投資のために支払ったお金だけが対象なので、過度な飲食や明らかに関係がないと思われる飲食代は認められないので注意してください。

4.経費について正しい知識を持ち、節税メリットを最大化しよう

不動産投資のための借入金が経費として認められない理由や、現金が出ていかないのに経費として計上できる減価償却費などについて解説しました。

減価償却費は不動産投資の節税メリットを生かす上でとても重要な知識なので、当記事で紹介した12項目の経費と併せて計上できるものはしっかりと計上して、不動産投資の節税メリットを最大化させましょう。

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